SL系脚本、物語
2008年01月20日
■Fly ~Session 2~ ■ 39
キオクの描画が始まった。
アバターの左腕から、新たなウインドウが出現。
そこには抽出されたキオクから画像データとして再構成された懐かしい思いでの数々が徐々に浮かび上がっていく・・・そういう想定だった。
アイコ ・・・ユージ。
まさに、あとコンマ数秒で完全に表示されようとしていた時・・・
<< Session 1
Session 2 禁断の果実
アイコにも所長にも、それが何の現象なのか理解できなかった。
アバターの左腕から、新たなウインドウが出現。
そこには抽出されたキオクから画像データとして再構成された懐かしい思いでの数々が徐々に浮かび上がっていく・・・そういう想定だった。
アイコ ・・・ユージ。
まさに、あとコンマ数秒で完全に表示されようとしていた時・・・
<< Session 1
Session 2 禁断の果実
アイコにも所長にも、それが何の現象なのか理解できなかった。
辺りが一瞬、ほんの一瞬だけフラッシュした。そして、爆発音。全てのコンピュータが激しい点滅を繰り返す。数秒後、停電。すぐに、辺りは静まり返り、甲高い周波数の電子音は、実際、耳鳴りだろう。
気を取り戻した所長は、すぐに状況を理解したのか、各機器のチェックを始めた。
所長 よかった、予備電源に切り替わってる。明かりを探してくるから、ここで待ってて。・・・それと、私が戻るまで、アバターには触らないでね。絶対。
所長が出て行くと必然的にアイコとコンピュータが残される。アイコのアバターとキオクを写すコンピューター。唯一これだけがポータブルだった為に、停電の影響を受けずに稼動していた。一人ぼっちになって泣き叫ぶ歳じゃない。アイコはただ黙って所長が閉めたドアを見つめていた。
声 アイ。大丈夫か?
アイコ ・・・誰?
声 アイ。こっちだ。
その声は、コンピュータから聞こえる声だった。画面を覗き込むアイが見たのものは、自分のアバターだけではなかった。さっきまでアイコのキコクを再現しようとしていたウインドウは消え、変わりに、一人のアバターの姿。死に別れた恋人。ユージ。彼は、アイコのアバターと並んでその場所に立っていた。
アイコ ・・・
部屋が明るくなった。間もなく所長が戻ってくるのだろう。なぜかアイコは慌てた。「ここにいてはいけない。」
どうしてそう思ったのかは分からない。
所長 近くに雷が落ちたみたいね。いやー、びっくりした。でもまあ良かった。特に異常は・・・
何気なく覗き込んだディスプレイの中には想定外のグラフィックスが描かれていた。アイコよりも遥かに動揺していた。
所長 そんな、バカな。
アイコ ねえ、「アイ」って。今私を呼ん・・・ユージなの?
ユージ 僕は・・・
所長 まさか、これが・・・このアバターはあなたの恋人?
アイコ ええ。3年前に死んでしまった・・・ユージ。
所長 またなの・・・?
アイコ どう言うことなんですか?これは私のキオクですよね。
所長 人間の心は、その人の家庭環境や経験、キオクによって大きく左右される。だから、キオクの塊から人間の心に似たものが生まれることもあるの。例えば今回の様に。
ユージ アイ・・・
アイコ でも、あなたはユージよね。
ユージ ボクはユージ・・・
アイコ 私のキオクからどうしてユージが?
所長 あなたの思い出の中で、彼はあまりにも大きい存在だったのよ。きっと。
アイコ ユージは私の心の中で生きていた・・・
ユージ ボクはユージ・・・君は・・・小暮藍子、アイだね?
所長 いけない。すぐに処置しないと。
アイコ 処置?ユージを消すと言うこと?
所長 これはあなたの恋人じゃない、あなた自身だ。あなたのキオクなんだから。
ユージ アイ?
アイコ ユージ!会いたかった。
所長 これ以上話してはいけない。
アイコ どうして!少しくらい良いじゃない。
所長 話せば話すだけ、厄介なことになるの。あなたはあなた自身のキオクを彼氏だと思いこんでしまう。それはとても危険なことなの。
アイコ 私はユージと話しができればそれで良い。
所長はキーボードに手をかけた。
アイコ やめて!
とっさに、アイコは所長の手からポータブルコンピュータを奪う。
所長 何をするの!
アイコ 私はユージと一緒にいたいの!
あまりの勢いにアイコを止めることが出来なかった。アイコはまるでそうすることが初めから決まっていたかのように、なんの迷いも無くコンピューターを奪い取り、間髪入れずに部屋を飛び出した。
所長 ちょ、ちょっと!待ちなさい!!
追いかけようとした時、また停電。なにかにつまづいて大きく転倒。
所長 ・・・あなたにまで、辛い思いをして欲しくないのに。
追いかけなければいけなかった。追いかけて、彼女の手から「ユージ」と呼ばれた幻を奪い取らなければいけなかった。が、所長は動くことができない。闇の中。・・・所長は残りわずかの気力で自分のポータブルを取り出す。
スタンバイ状態のそれは、開くとすぐに語りかけてきた。
声 どうしたんだ?そんな泣きそうな面をして。
所長 ・・・
声 また研究が失敗したのか?
所長 ううん。違うの。
声 じゃあ、どうしたんだ?
所長 アイコに・・・アイコのキオクに、心が宿ってしまったの。もうこんな事、二度やってはいけない間違いだったのに・・・
声 間違い、か・・・
所長 そう。きっと彼女は、「彼氏が生き返った」と思いこんでしまう。今の私と同じ。
声 お前と同じ・・・
所長 あなたは遠い昔にこの世を去った人。それなのに私は、
声 仕方ないじゃないか。お前は俺に会いたかったのだから。
所長 私まだあなたを愛しつづけている。まるでまだ生きている人かのように。でもあなたはもうどこにもいないの。
声 辛いか?
所長 辛い過ぎるわよ。この世にいない人間を愛するなんて。
>>Goto Session 3
気を取り戻した所長は、すぐに状況を理解したのか、各機器のチェックを始めた。
所長 よかった、予備電源に切り替わってる。明かりを探してくるから、ここで待ってて。・・・それと、私が戻るまで、アバターには触らないでね。絶対。
所長が出て行くと必然的にアイコとコンピュータが残される。アイコのアバターとキオクを写すコンピューター。唯一これだけがポータブルだった為に、停電の影響を受けずに稼動していた。一人ぼっちになって泣き叫ぶ歳じゃない。アイコはただ黙って所長が閉めたドアを見つめていた。
声 アイ。大丈夫か?
アイコ ・・・誰?
声 アイ。こっちだ。
その声は、コンピュータから聞こえる声だった。画面を覗き込むアイが見たのものは、自分のアバターだけではなかった。さっきまでアイコのキコクを再現しようとしていたウインドウは消え、変わりに、一人のアバターの姿。死に別れた恋人。ユージ。彼は、アイコのアバターと並んでその場所に立っていた。
アイコ ・・・
部屋が明るくなった。間もなく所長が戻ってくるのだろう。なぜかアイコは慌てた。「ここにいてはいけない。」
どうしてそう思ったのかは分からない。
所長 近くに雷が落ちたみたいね。いやー、びっくりした。でもまあ良かった。特に異常は・・・
何気なく覗き込んだディスプレイの中には想定外のグラフィックスが描かれていた。アイコよりも遥かに動揺していた。
所長 そんな、バカな。
アイコ ねえ、「アイ」って。今私を呼ん・・・ユージなの?
ユージ 僕は・・・
所長 まさか、これが・・・このアバターはあなたの恋人?
アイコ ええ。3年前に死んでしまった・・・ユージ。
所長 またなの・・・?
アイコ どう言うことなんですか?これは私のキオクですよね。
所長 人間の心は、その人の家庭環境や経験、キオクによって大きく左右される。だから、キオクの塊から人間の心に似たものが生まれることもあるの。例えば今回の様に。
ユージ アイ・・・
アイコ でも、あなたはユージよね。
ユージ ボクはユージ・・・
アイコ 私のキオクからどうしてユージが?
所長 あなたの思い出の中で、彼はあまりにも大きい存在だったのよ。きっと。
アイコ ユージは私の心の中で生きていた・・・
ユージ ボクはユージ・・・君は・・・小暮藍子、アイだね?
所長 いけない。すぐに処置しないと。
アイコ 処置?ユージを消すと言うこと?
所長 これはあなたの恋人じゃない、あなた自身だ。あなたのキオクなんだから。
ユージ アイ?
アイコ ユージ!会いたかった。
所長 これ以上話してはいけない。
アイコ どうして!少しくらい良いじゃない。
所長 話せば話すだけ、厄介なことになるの。あなたはあなた自身のキオクを彼氏だと思いこんでしまう。それはとても危険なことなの。
アイコ 私はユージと話しができればそれで良い。
所長はキーボードに手をかけた。
アイコ やめて!
とっさに、アイコは所長の手からポータブルコンピュータを奪う。
所長 何をするの!
アイコ 私はユージと一緒にいたいの!
あまりの勢いにアイコを止めることが出来なかった。アイコはまるでそうすることが初めから決まっていたかのように、なんの迷いも無くコンピューターを奪い取り、間髪入れずに部屋を飛び出した。
所長 ちょ、ちょっと!待ちなさい!!
追いかけようとした時、また停電。なにかにつまづいて大きく転倒。
所長 ・・・あなたにまで、辛い思いをして欲しくないのに。
追いかけなければいけなかった。追いかけて、彼女の手から「ユージ」と呼ばれた幻を奪い取らなければいけなかった。が、所長は動くことができない。闇の中。・・・所長は残りわずかの気力で自分のポータブルを取り出す。
スタンバイ状態のそれは、開くとすぐに語りかけてきた。
声 どうしたんだ?そんな泣きそうな面をして。
所長 ・・・
声 また研究が失敗したのか?
所長 ううん。違うの。
声 じゃあ、どうしたんだ?
所長 アイコに・・・アイコのキオクに、心が宿ってしまったの。もうこんな事、二度やってはいけない間違いだったのに・・・
声 間違い、か・・・
所長 そう。きっと彼女は、「彼氏が生き返った」と思いこんでしまう。今の私と同じ。
声 お前と同じ・・・
所長 あなたは遠い昔にこの世を去った人。それなのに私は、
声 仕方ないじゃないか。お前は俺に会いたかったのだから。
所長 私まだあなたを愛しつづけている。まるでまだ生きている人かのように。でもあなたはもうどこにもいないの。
声 辛いか?
所長 辛い過ぎるわよ。この世にいない人間を愛するなんて。
>>Goto Session 3
フィクションです。
Other Stories
Posted by fujiyama at 22:26
│☆Fujiyamaの本棚☆
